Aさん 50代男性 事務職 中間管理職
几帳面な性格で責任感の強いAさんは、長年事務職として勤務をしており、周囲の人とも良好なコミュニケーションをとれています。
ある時、会社からの要請で新しい仕事の取りまとめ役となり、業務量が大幅に増えました。
処理しきれないくらいの仕事が回ってきますが、Aさんは断ることや他の人に回すことができず、残業時間もどんどん増えていきました。
3ヶ月程経つと目に見えてやつれてきてしまい、明らかに元気もなくなってきています。
ある日、会社に一本の電話が掛かってくるとAさんからでした。
近隣の心療内科クリニックに掛かったところ、「うつ状態と言われ、1ヶ月会社を休むように言われた」とのことでした。
理解・対応
体を動かすことに「体力」というエネルギーを必要だとしたら、メンタル(心)を動かすにもやはりエネルギーが必要になります。
いわゆる「うつ状態」というのは、そのメンタル(心)を動かすエネルギーが低下してしまっている状態のことです。
そしてその低下したエネルギーを回復させるためには、体力と同じく十分な休息が必要となります。
ただし、風邪などの場合ですと体力は1~2日休むとまずまずは回復しますが、メンタル(心)の場合はそうはいきません。
例えば、誰しも経験がある「恋愛上での相手との別れ」ですが、その「つらさ」は1~2日では回復するものではないはずです。
ましてや「気合いが足りない」といった類のものではないのはお分かりいただけるかと思います。
医師の指示により1ヶ月会社を休むようにということは、少なくともその期間位はメンタル(心)の休息が必要ということでしょう。
まずは十分に休むことによって、メンタル(心)のエネルギーを回復させることが必要です。
(なお、この「休む」というのが非常に苦手な方も多くいらっしゃいます)
医師が必要と判断すれば薬物療法も行われるかもしれません。
そして、次が重要なのですが、ある程度回復をしてきたら、今度は長期に休まなくていいように今回の一連を振り返っておくことが大事になります。
Aさんは確かに真面目な方ではありますが、真面目すぎるが故に、長期に会社をお休みしなければならなくなってしまった、とも言えます。
責任感があることと、全ての業務を自分でやることは全くの別問題です。
もちろん、真面目なことを悪いといっているわけではありません。
ただ、同じことを同じようにやれば、おそらく同じような結果になります。
自分の力で会社の業務や周囲の環境を変えるには限界がありますが、自分のことであれば努力と意識をすればある程度変えることができます。
カウンセリングという第三者の視点を敢えて通じて、自分のこと、会社のこと、今後のことなどを考えていくことが非常に有効です。
しっかりと自分のことを理解し、変えられるところは変えることによって、さらによりよい生活を送っていくことができると思います。
このAさんは、メランコリー親和性性格と呼ばれる性格に近いようにお見受けいたします。
言ってしまえば「真面目」な性格なのですが、その背景には他者との「軋轢」を避けたいといった意味合いも含まれます。
日本人としては、他者との軋轢を避けるのはむしろ好ましいと捉えがちですが、行き過ぎたものは自分の身をも滅ぼしかねません。
Noと言えることや、管理上適切に業務を振り分けることができるのも、実は今回のAさんにとってはできなかったのかもしれません。
こういった理解の元、カウンセリングを進めていき、もっと楽に生きられる自分を模索していきます。